映画「ワンダーウーマン 1984」は、2020年の年末に公開されたDCコミックス原作のアクション映画。
本作は、1984年のアメリカを舞台に、女性ヒーローであるワンダーウーマンが活躍するエンタメ性あふれる作品として、多くの映画ファンに注目されました。
この記事では、映画のあらすじや本作におけるテーマについて、映画好き目線で深掘りしていきますね。
「80年代のアクション映画を女性ヒーローで再現した意図」や「キャラクターの描写から見えるメッセージ」、「ポスト真実の時代への問いかけ」という3つの観点で考察を行います。
これを読めば、映画「ワンダーウーマン 1984」の奥深い魅力がより一層楽しめるはず!
映画「ワンダーウーマン 1984」のあらすじ
アマゾン族の王女であり超人的な力を持つダイアナ・プリンス(ワンダーウーマン)が、1984年のアメリカで新たな敵と対峙する物語。
第一次世界大戦中に活躍した前作「ワンダーウーマン」から時代は一気に進み、舞台は80年代のアメリカ。
華やかな文化と物質主義が象徴的なこの時代において、ダイアナはスミソニアン博物館で働きながらヒーロー活動を密かに続けていました。
物語の中心にあるのは、願いを叶える魔法のアイテム「ドリームストーン」。
これに触れた人々の願望が次々に現実化する一方で、世界は混乱に陥っていきます。
新たな敵として登場するのは、物欲と権力に取りつかれた実業家マックス・ロードと、博物館の同僚から変貌を遂げた敵バーバラ・ミネルバ(チーター)。
ダイアナ自身もこの魔法の影響で亡き恋人スティーブとの再会を果たすが、その代償としてスーパーパワーを失ってしまう。
スティーブはドリームストーンの力によって別人の体を借りて復活するため、彼との時間は限られていると感じつつも、ダイアナは彼との再会に喜びを見出す。
一方で、この魔法の影響が世界規模で混乱を引き起こす中、彼女は個人的な幸せとヒーローとしての使命の狭間で葛藤することに。
マックス・ロードはドリームストーンの力を利用して世界中の人々の願いを叶える代わりに、自身がさらに権力と富を得ることを企てます。
その過程で世界は未曾有の危機に陥り、バーバラとの対立や、自らの力を失う代償に直面しながらも、真実の力で事態を収拾しようとするダイアナ。
果たして、ダイアナは自らの犠牲を払いつつも、崩壊寸前の世界を救うことができるのでしょうか?
「ワンダーウーマン 1984」における3つの考察
考察1:80年代のアクション映画の再現と女性ヒーローの躍進
本作の舞台である1984年は、アクション映画が黄金期を迎えた時代でもあります。
「スーパーマン」シリーズや「バック・トゥ・ザ・フューチャー」などの作品が盛り上がりを見せていました。
この時代背景を取り入れた「ワンダーウーマン 1984」は、当時の映画文化をオマージュしつつ、女性ヒーローという新たな視点を提案しています。
冒頭のシーンで描かれるアマゾンのトライアスロン的な試練や、ショッピングモールでのユーモアあふれるアクションは、まさに80年代の娯楽映画を彷彿とさせました。
ショッピングモールのシーンは、1983年の「スーパーマン3」を意識した演出が見られ、観客に懐かしさを感じさせる工夫がされていましたね。
このような要素を女性ヒーローの視点で再構築した点は、映画史の新しい1ページとして評価できます。
本作が女性ヒーローの躍進を象徴する理由は、その描写が従来の男性主導のアクション映画を単に模倣するのではなく、女性の視点を強く反映している為。
ワンダーウーマンの戦い方は、パワーで圧倒するだけではなく、知恵やスピード、そして敵との心理戦を活用するスタイルが特徴的。
このアプローチは、従来のアクション映画における「力の象徴」としての男性ヒーロー像とは一線を画しています。
また、彼女が戦う理由も「正義」や「使命感」だけでなく、人々の心に希望を与えることを重要視しており、女性ヒーローならではの視点が感じられました。
映画全体のトーンも従来のアクション映画よりカラフルで軽やかですよね。
80年代のポップカルチャーを取り入れた明るいビジュアルや音楽の選択は、観客に楽しさとノスタルジーを同時に感じさせます。
暗いトーンが主流だった近年のヒーロー映画とは一線を画しており、特に女性や若い観客層へのアピールを意識しているように映りますね。
女性監督であるパティ・ジェンキンスの存在も見逃せません。
彼女は、1980年代のアクション映画への愛を示しつつ、それを現代的なテーマと融合させることに成功しました。
冒頭のアマゾン競技シーンは、80年代のエピックな冒険映画を彷彿とさせると同時に、「真実を受け入れること」の重要性を描いており、本作全体のテーマともつながっています。
80年代のアクション映画を基盤としながらも、現代的な価値観を巧みに取り入れた点が本作の大きな魅力。
「ワンダーウーマン 1984」は、80年代アクション映画の再現にとどまらず、女性ヒーローの新たな可能性を提示した作品として評価されるべきでしょう。
従来のアクション映画が持つ魅力を継承しつつ、それを新しい時代の視点で再構築する試みは、多くの観客にとって新鮮な体験となったはずです。
考察2:キャラクター描写から見える現代的なテーマ
本作には、個性豊かなキャラクターが登場。
注目すべきは、バーバラ・ミネルバとマックス・ロードの二人。
バーバラ・ミネルバは、社会で認められず孤独を感じていた学芸員から、ドリームストーンの力によって力を得るキャラクターへと変貌します。
彼女の物語は、1980年代の職場で蔓延していた女性差別や、現代にも通じる社会的な問題を反映しているといえるでしょう。
「誰もが持つ自己肯定感の欠如」というテーマは、観客が感情移入しやすいポイントでした。
彼女が羨望と憧れの対象として見ていたダイアナとの関係性が、彼女の変貌を通じて「人間関係における自己評価の変化」を象徴的に描いています。
ダイアナに憧れ、力を手に入れた彼女が次第にその純粋さを失い、暴走していく姿は、多くの現代人が共感しうる「自己実現の歪み」を示唆しているのです。
一方、マックス・ロードは、成功を装いながらも実際には崩壊寸前のビジネスを営む実業家として描かれていました。
彼のキャラクターは、1980年代の物質主義や拝金主義の象徴。
彼の姿は現代のポスト真実の時代ともリンクしており、特にトランプ元大統領を想起させる部分が多く見られました。
マックス・ロードのキャラクターの描写を通じて、監督は権力や成功に執着する社会の脆弱さを浮き彫りにしています。
彼の「無限の願望を追求する」という行動は、現代社会における過剰消費やSNS時代の承認欲求とも結びつくでしょう。
マックスの背後には「息子への愛情」という人間味あふれる一面が描かれており、単なる悪役ではなく複雑なキャラクター性を持っています。
彼が息子の存在を通じて真実と向き合うシーンは、家族や愛の重要性をテーマに据えており、観客に強い感動を与えたはず。
マックス・ロードは悪役でありながら多面的な描写がされている点が本作の魅力の一つ。
こうしたキャラクター描写は、観客に「自分自身の内面と向き合う必要性」を問いかけるものとなっています。
願望の追求が自己実現にどう影響を与えるのか、またその代償として何を失うのかというテーマは、現代社会における普遍的な問題を浮き彫りにしていると言えますね。
考察3:ポスト真実の時代への問いかけ
映画のテーマの一つに、「真実(Truth)」が繰り返し語られる点があります。
ドリームストーンは、人々の願望を現実化させる一方で、その代償として現実をゆがめる。
このアイテムを巡る物語は、現代社会が直面している「ポスト真実」の問題を暗示していると考えられます。
ポスト真実の時代とは、感情や個人的な信念が事実よりも重視される状況を指します。
本作において、マックス・ロードが「真実を受け入れること」の重要性に目覚めるラストは、現代社会への強いメッセージでしょう。
マックスが力の象徴として君臨しようとする行動は、事実を覆い隠し、自らの利益や権力のために虚構を利用する現代の問題そのものです。
このような状況において、「真実を受け入れる」という選択肢がいかに困難でありながらも重要であるかが強調されています。
スティーブとの恋愛エピソードは、ダイアナが個人的な幸せを手放し、世界のために犠牲を払うという物語構造を通じて「現実を受け入れる強さ」を示していました。
この選択は、観客に対して自己犠牲や社会への責任について深く考えさせつつ、ダイアナがスティーブを手放す決断は、個人の願望と世界全体の利益の間で揺れる葛藤の象徴でしたね。
さらに、「真実」というテーマは観客にも問いを投げかけます。
私たちが日常生活で信じているものは、本当に事実に基づいているのでしょうか。
自分自身の都合や感情に合わせて解釈しているだけなのでしょうか。
本作は、このようなポスト真実の時代において、個々人が真実に向き合う重要性を強く訴えかけていることでしょう。
映画のラストで描かれる、マックスが息子のために真実と向き合い、虚構を手放す姿は、観客に希望を与える瞬間でもありました。
ポスト真実の時代においても、信念と愛情が正しい選択を導くことを示唆していますね。
現実を受け入れることの重要性を再確認させるこのメッセージは、現代社会における混乱を乗り越えるためのヒントを与えてくれるでしょう。
まとめ
「ワンダーウーマン 1984」は、エンターテインメントとしての楽しさだけでなく、現代社会への問いかけを内包した作品。
80年代のアクション映画の魅力を女性ヒーローで再現した点や、キャラクターの描写から見える社会的テーマ、そしてポスト真実の時代へのメッセージ性など、多くの要素が詰まっています。
物語全体に散りばめられた「真実」というテーマは、ただのヒーロー映画に留まらない深い意味をもたらしていることでしょう。
ドリームストーンが象徴する、望むものが簡単に手に入る代わりに失うものがあるという教訓は、現代社会の欲望や利己主義を映し出す鏡とも言えます。
それに立ち向かうワンダーウーマンの姿は、希望と自己犠牲を体現しているのです。
80年代のノスタルジックな雰囲気と、現代的なテーマが巧みに融合されている点も見逃せません。
この映画を通じて、観客は単なるアクションだけではなく、自分たちの生きる時代や価値観を見つめ直す機会を得ることができるはず。
「ワンダーウーマン 1984」は、エンターテインメント性と社会的メッセージを兼ね備えた作品として、映画の新たな可能性を示しました。
ヒーロー映画の枠を超えた本作が、観る人それぞれの心に何らかの問いを残すことは間違いありません。
より多くの人々が「真実」とは何かを考えるきっかけになれば嬉しいです。
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